新たなブランドの世界へ
2025年カンヌライオンズから見えてきた、7つのシグナル
こんにちは、I&COです。このニュースレターでは、日本の社会・企業・人のより良い未来への展望を開くヒントとなるようなコラムや、I&COの最新情報を隔週でお届けしています。
今回のコラムは、ニューヨークに拠点を置くレイ・イナモトが執筆した「新たなブランドの世界へ」です。世界最大級の広告祭であるカンヌライオンズに参加するなかで見えてきた、業界の未来を示唆する7つのシグナルをご紹介します。
このコラムは、レイ・イナモトの「The New Creative Order」をベースに翻訳・編集したものです。
1.
明るいニュース:AIが広告を終わらせることはない。
残念なニュース:でも、AIが広告を救うこともない。
Appleのマーケティング担当VPであるトール・ミーレンの言葉が、業界の現状を端的に表している。AIは万能ではないが、避けて通れない変化でもある。
2.
時間と工数ではなく、演算力に価値をつけよ。
一部のサービス企業は、顧客への課金方法を抜本的に見直し始めている。あらゆるエージェンシーや企業が「自分たちの提供価値はどこにあるのか?」を問い、ビジネスモデルを再設計しなければならない局面を迎えている。
3.
カンヌの主役は、CMOとCEOへ。
今年のカンヌライオンズでは、過去最多ともいえる数のCEOが登壇していた。ビジネスリーダーが創造性に関心を寄せるのは歓迎すべき傾向だが、登壇者の大半が白人男性だったのも事実。来年以降は、ポジションの多様性やステージ上の顔ぶれがより広がることを期待したい。
4.
文化に響くニッチな戦術 > 拡張できるビッグ・アイデア
かつてなら「機能的すぎる・戦術的すぎる」と見なされたであろう施策が、いま、評価されている。たとえば、Tecateの「Gulf of Mexico Bar」や、米映画芸術科学アカデミーの「Caption With Intention」などがその好例だ。マスに広がるアイデアよりも、文化や文脈に根ざした意義ある施策が、新たな評価基準となりつつある。

5.
未来の広告はすべて、プロダクトのデモになる。
かつて私の上司であり業界のレジェンドだったボブ・グリーンバーグが数年前に言ったこの言葉は、当時は大げさに聞こえたかもしれない。しかし、今ではそれが現実となりつつある。グランプリを受賞した「Shot on iPhone」は、まさに製品そのものを語るデモンストレーションであり、Appleならではのクオリティと規律によって成立している。
6.
問いを立て直そう。「どうストーリーを語るか?」から、「どう信頼を築くか?」へ。
ストーリーテリングの力は人を動かすことにある。だが、それが真実でなくとも人を動かしてしまう可能性があることには注意が必要だ。これからの時代は、真実に基づいて信頼を積み重ねる姿勢が長期的な価値を生む。
7.
マーケティングにおける「パーパス」には、まだ出番がある。
近年「パーパス広告」は一部で批判されており、この記事のような指摘もある。私もその一部には同意する。しかし、Doveの「Real Beauty」キャンペーンやL’Orealの「The Final Copy of Ilon Specht」のように、長期的な影響力を持つ事例が再び評価されていたことは心強い。
正しく実践されたパーパスは、強く、そして持続可能な力となる。






