自走する「信頼の循環」を生むには
持続的な成長を生み出す「ブランドのフライホイール」
こんにちは、I&COです。このニュースレターでは、ブランドの視点でこれからの経営を考えるヒントとなるようなコラムや、I&COの最新情報を隔週でお届けしています。
今回は、I&CO創業パートナーのレイ・イナモトの新著『ブランド・シフト ―「信頼」で選ばれる時代の成長戦略』の発刊に先駆け、本書の内容を抜粋してお届けします。第2回となる今回のテーマは、持続的な成長を生み出す「ブランドのフライホイール」です。従来のマーケティング手法の限界と、信頼を起点とした新しいブランド構築の考え方をご紹介します。
この記事は、5月に発刊予定の書籍『ブランド・シフト ―「信頼」で選ばれる時代の成長戦略』から一部を抜粋し、編集したものです。

ファネルの限界
「意味を買う時代」から「信頼で選ばれる時代」へ。このシフトに対応するには、ブランド構築のアプローチそのものを変える必要がある。
これまでのブランド構築は、マーケティングにおける「ファネル」の考え方を前提に設計されてきた。認知 → 関心 → 検討 → 購入という、一方向の流れである。企業は広告を通じて大量の見込み客を集め、段階的に絞り込んでいく。テレビCMや新聞広告が主役だった時代、この構造は有効に機能した。できるだけ多くの人にメッセージを届け、その中から購入者を獲得する——それがマーケティングの基本的な設計思想だった。
しかし、この手法には弱点がある。「購入」をゴールとしており、その先にある顧客との関係性が考慮されていない点だ。一度買ってもらえれば終わり、という発想では、信頼は積み上がらない。
加えて、デジタル時代の顧客は、もはや企業が用意した一本道を素直にたどらない。SNSで口コミを調べ、比較サイトを確認し、時には購入した後にブランドを認知することすらある。情報の非対称性が崩れ、顧客が自ら能動的に情報を取りに行く時代において、企業が一方的に「伝える」だけのアプローチは通用しなくなっている。今やファネルのモデルは、現実の顧客行動とかけ離れてしまっている。
そして何より、信頼は一方通行では築けない。
ブランドのフライホイールとは何か
では、ファネルに代わる考え方とは何か。本書の第4章で詳しく紹介する「ブランドのフライホイール」は、「信頼による差別化」を実現し、持続的な成長を生み出すための仕組みである。
フライホイールとは、重い円盤状の機械部品のことで、一度回り始めると慣性の力で回転が持続し、やがて加速していく性質を持つ。Amazon創業者のジェフ・ベゾスが「顧客体験の向上が集客を生み、それが売上を生み、投資を可能にし、さらなる顧客体験の向上につながる」という好循環を説明する際に、この比喩を用いたことで知られている。一度勢いがつけば、外部からの力を借りずとも自走し続ける、そんなイメージだ。
僕が提唱するブランドのフライホイールは、循環する4つのステップで構成される。
COMPANY:「会社」が生み出す「プロダクト」
PRODUCT:「プロダクト」が魅了する「顧客」
CUSTOMERS:「顧客」が信頼する「ブランド」
BRAND:「ブランド」が差別化する「会社」
会社がプロダクトを生み出し、そのプロダクトが顧客を魅了する。魅了された顧客が信頼を寄せることでブランドが育ち、そのブランドが会社を差別化する。差別化された会社は、より優れたプロダクトを生み出す力を持つ。こうして循環は続き、回転を重ねるごとに勢いを増していく。
この構造がファネルと根本的に異なるのは、「購入」が終点ではなく通過点に過ぎないという点だ。顧客との関係は購入後も続き、その積み重ねがブランドへの信頼となり、やがて会社そのものの競争力へと転化する。
こうした循環をつくることで、従来型の広告投資に依存しないブランド構築が可能になる。機能や価格で競争するのではなく、信頼を軸に選ばれ続ける企業になること——それこそが、信頼による差別化である。
循環を動かす4つの要素
フライホイールを実際に機能させるには、4つのステップそれぞれに対応する要素を丁寧に設計する必要がある。会社のミッションやビジョン、プロダクトの価値とその可視化、顧客とのつながりを深める体験設計、そして信頼による差別化。これらが有機的につながることで連鎖反応が起き、持続可能なブランドが育つ。
どれかひとつが欠けても、フライホイールはうまく回らない。たとえば優れたプロダクトがあっても、顧客との接点に一貫性がなければ信頼は育たない。パーパスやミッションがあっても、それがプロダクトや体験に反映されていなければ、言葉は空洞化する。逆に言えば、この4つが噛み合った時、ブランドは広告費をかけずとも「語られ、選ばれ続ける」状態に近づいていく。
現代におけるブランドとは何か。ブランドの構造はどうあるべきか。そして、「ブランドのフライホイール」をどのように活用し、企業の成長へとつなげるのか。こうした問いに対する基本的な知識と実践を、これまでの経験、事例、そして多数のインタビューに基づき、本書では紐解いている。
ブランドをつくることは、もはや特定の部門や担当者だけの仕事ではない。それは、会社の未来を設計すること、つまり経営そのものである。
日本企業が未来を切りひらくために必要なブランドの考え方と、フライホイールによる新しい成長モデル。『ブランド・シフト —「信頼」で選ばれる時代の成長戦略』を、ぜひ手に取っていただければ幸いです。
書籍概要
タイトル:『ブランド・シフト —「信頼」で選ばれる時代の成長戦略』
発売予定日:2026年5月19日(火)
書籍の詳細・ご予約はこちら:https://brandshift.iandco.com/





