こんにちは、I&COです。このニュースレターでは、ブランドの視点でこれからの経営を考えるヒントとなるようなコラムや、I&COの最新情報を隔週でお届けしています。今回は Extra Editionとして、7月に発表した「The Flywheel Checkup(ブランド構築診断ツール)」をご紹介します。
ブランドのスコアがアクションにつながらない理由
ブランド戦略についてご相談をいただく際、いちばん多いのは「ブランドのどこかに深刻な問題が起きている」という話ではありません。むしろ、「プロダクトは評価されている」「顧客満足度も悪くない」「メディアにも取り上げられている」、それなのに次の一手が決めきれない。そういった内容であることがほとんどです。
ブランド認知度や好意度、業界内でのランキングなどを定期的に調査・観測している企業や事業も多くあります。一方で、その結果を次のアクションにつなげるのは簡単ではありません。
原因の一つは、ブランド構築を循環型のプロセス「ブランドのフライホイール」として捉えたとき、その循環のどこかに詰まりがあっても、それが「どこで」「なぜ」起きているのかが明らかになっていないことです。
I&COは今年7月、この「詰まり」を可視化するため無料診断ツール「The Flywheel Checkup」を公開しました。20の質問に回答することで、自社ブランドの循環がどこで停滞し、どのような取り組みが必要かが明らかになります。診断結果は16タイプに分かれ、公開以来1,000回以上使っていただいています。
🎬 「The Flywheel Checkup」を実際に活用する様子を、動画メディア「PIVOT」でご紹介いただきました
▶️ 活用する様子はこちら 【ブランドと成長戦略】
▶️ 前提となるブランド・シフトの考え方についてはこちら【ブランドとは何か?信頼による差別化だ】
ブランドは、4つの関係の循環でつくられる
I&COが提唱する「ブランドのフライホイール」は、ブランド構築のプロセスを認知から購入へと降りていく「ファネル」ではなく、以下の4つの関係が回り続ける循環として捉える考え方です。
COMPANY →(が生み出す)→ PRODUCT
企業の信念・独自の視点が、プロダクトやサービスに翻訳されるPRODUCT →(が魅了する)→ CUSTOMERS
そのプロダクトが顧客を惹きつけるCUSTOMERS →(が信頼する)→ BRAND
顧客の体験と信頼が、ブランドの資産として積み上がるBRAND → (が差別化する)→ COMPANY
強くなったブランドが、採用・提携・新規事業といった企業活動そのものを押し上げる
これら4つの関係がつながって初めて、ブランド構築は「回り続ける」状態になります。逆に言えば、どこか一つが詰まっていれば、他の3つの関係がどれだけ健やかでも循環は完成しません。
「The Flywheel Checkup」は、まず企業ブランド(コーポレートブランド全体)またはプロダクトブランド(特定の製品・サービス)のどちらを診断したいかを選び、続いて4つの関係に沿ったパートごとに設問に答える構成となっています。
結果として出てくるのは、総合スコア、最大の課題、ブランドのタイプ、そして次に向き合うべき3つの問いです。
パートごとの状態の組み合わせによって、診断結果は16タイプに分かれます。ここからは、そのうち4つのタイプをピックアップし、診断結果の文面から一部を抜粋して見ていきます。
タイプ1 :市場成果型
次の一手は「COMPANY → PRODUCT」にあり
プロダクト/サービスも顧客もブランドも機能しています。次は、その中心にある「信念」を言葉にしていく段階です。
市場が求めるものを的確に作り、顧客の支持を得て、ブランドも企業活動を後押ししている。すべてが順調に見えるなかで、次に向き合いたいのは、「なぜ自分たちはこれをやるのか」という信念を、社内で共有された統一された言葉にしていくことです。
この言語化は、組織が大きくなるとき、新規事業に挑戦するとき、経営の世代交代を迎えるときに、確かな判断軸として効いてきます。市場の追い風が吹いているいまこそ、信頼の源泉を社内の共通言語に落とし込んでいく好機です。
これから取り組むべき、3つの問いかけ
なぜ自分たちはこの事業をやっているのか。一文で言い表せるか。
創業者・経営者の頭の中にしかない判断軸は、いつ、誰が引き継ぐか。
社内メンバーそれぞれが、異なる言葉で同じ意味を語っていないか。
この診断結果に対するI&COの視点
4タイプのなかで、最も「いま困っていない」のがこのタイプです。そのため取り組みが後回しになりがちですが、信念が言語化されていない状態は、追い風が止まった瞬間に判断の拠り所がなくなることを意味します。市場に選ばれている理由が、市場側の事情にあるのか、自分たちの独自性にあるのか。順調なうちにこそ、この問いに落ち着いて向き合うことができます。
タイプ2 :理念共感型
次の一手は「PRODUCT → CUSTOMERS」にあり
信念があり、顧客はそれに共感しています。次は、その共感をプロダクト/サービス体験とブランドの還流へとつなげ、循環を一本の線にしていく段階です。
経営の信念に共感してくれる人たちがいる。これは大きな資産です。次のテーマは、その共感を「実際のプロダクト/サービス体験」で裏づけ、さらに「ブランドの還流」として企業全体の競争力へと変換していくことです。共感は確かに存在していて、それをかたちあるものへ育てていく段階にあります。
次の一歩は、共感を体験で裏づけること。そして、その体験を語れる事実(ファクト)に変えていくこと。ファンの想いを、経営の力へと翻訳していく作業が鍵になります。
これから取り組むべき、3つの問いかけ
ファンが共感しているのは「言葉」か、それとも「実際の体験」か。
信念とプロダクト/サービスの間にある翻訳の余地は、誰が埋めるべきか。
このブランドへの共感を、経営の競争力にどう変換するか。
この診断結果に対するI&COの視点
理念やパーパスの言語化に力を注いだ企業ほど、このタイプに行き着きます。言葉は磨かれ、共感も集まっているものの、その言葉がプロダクトの意思決定にまで降りていない状態です。理念は、機能・仕様・体験のどこに現れているかを説明できて初めてブランドになります。「私たちの信念が、この場面のこの挙動に現れている」と言えるかどうか。それがこのタイプの分岐点です。
タイプ3 :プロダクト評判型
次の一手は「CUSTOMERS → BRAND」にあり
信念があり、プロダクト/サービスもあり、ブランドの評判も外部から得られています。次は、その評判と顧客の実体験をより重ね合わせていく段階です。
このタイプで注目したいのは、フライホイールの中段、顧客が体験を通じてブランドを語る部分です。外部評価(ブランド調査、メディア露出、社員の誇り、新規取引)は高い水準にある一方で、実際の顧客接点での「らしさ」には、まだ伸びしろがあります。
ここで大切にしたいのは、評判と実体験を重ね合わせていくこと。顧客が日々触れる接点(サポート、UI、購入体験、フォロー)に、ブランドの信念を改めてつなげていく。広告予算よりも、接点の質に投資していくフェーズだと考えます。
これから取り組むべき、3つの問いかけ
顧客が自社を語る言葉と、社内の自社を語る言葉は、どれくらい重なっているか。
ブランドへの期待と、実際の体験の差が最も大きいのは、どの接点か。
顧客接点を最も担っている現場に、ブランドの信念はどこまで届いているか。
この診断結果に対するI&COの視点
評判が先行しているブランドは、実は最もリスクの高い状態でもあります。期待値が体験を上回っている限り、顧客は静かに離れていくからです。逆に言えば、ここは最も投資対効果が読みやすいフェーズでもあります。落差の大きい接点を一つ選び、そこを集中的に磨く。派手ではありませんが、循環をつなぎ直す確実な一手です。
タイプ4 :顧客信頼型
次の一手は「BRAND → COMPANY」にあり
信念・プロダクト/サービス・顧客の関係はいずれも健やかに機能しています。次は、その積み重ねを採用・提携・新規事業といった企業全体の力へと広げていく段階です。
フライホイールの前半が美しく回っています。経営の信念が事業に翻訳され、それが顧客を惹きつけ、信頼を蓄積している——多くの企業が到達できない水準に届いています。
次のテーマは、その信頼を「企業全体の競争力」として育てていくこと。優秀な人材の獲得、新規パートナーからの問い合わせ、株主や投資家からのブランド価値評価。これらを顧客満足と同じ水準まで引き上げていく余地があります。広報・IR・採用・社員エンゲージメント、それぞれの領域にブランドという共通言語を埋め込むことで、循環が完成していきます。
これから取り組むべき、3つの問いかけ
顧客からの信頼の源泉を、経営指標に翻訳できる言語があるか。
採用面接で「このブランドに携わりたい」と言われるために、いま育てるべきものは何か。
株主・取締役会で、ブランドを「経営の話」として語れているか。
この診断結果に対するI&COの視点
このタイプの企業では、ブランドづくりがマーケティング部門の中に閉じてしまっていることが少なくありません。顧客からの信頼という最大の資産が、社内で「顧客満足度」という一つの指標に閉じ込められたままになってしまっている状態です。ここで必要なのは新しい施策ではなく、すでにある信頼を経営の言語に翻訳し直す作業です。ブランドが経営会議の議題になることで、循環が次の循環につながります。
「The Flywheel Checkup」診断結果の見方
今回ご紹介したのは、フライホイールを構成するつながりのうち、それぞれ一箇所で循環が止まっているタイプです。実際の診断結果を見ると、いくつか重要なことが見えてきます。
1. 診断の目的は、「弱点」を見つけることではない
診断結果が示したいのは、「できていないこと」ではありません。すでに機能している力を、次にどこへつなげれば循環が完成するのか。その優先順位を明らかにすることです。
2. 総合スコアより、「循環の詰まり」に目を向ける
総合スコアが高くても、一箇所に滞りがあれば、フライホイールはそこで止まります。逆に総合スコアが控えめでも、詰まっている場所が一箇所であれば次にやるべきことは明確になります。
3. 次の一手は、「目新しいこと」とは限らない
すべてのタイプに共通するのは、必要な打ち手の多くが、すでに持っているものの「翻訳」だということです。信頼を経営指標に、評判を体験に、理念をプロダクトに、成果を言葉に。ゼロから作るのではなく、つなぎ直すというアクションに、フライホイールの実務的な意味があります。
まずは5分、自社のブランドを診断してみてください
診断結果は全部で16タイプあります。4つすべてが健やかに回っている「循環確立型」から、すべてがこれからの「基礎構築型」まで、どのタイプにもそれぞれに次の一手があります。
診断結果が出たら、まずは「自社の実感と合っているか」「3つの問いに、いまどう答えるか」をぜひ、社内で話してみてください。
▶ 診断はこちら:https://brandshift.iandco.com/flywheel/
そこから先、具体的にどう動かしていくかをより踏み込んで考えたい場合には、I&COにご相談ください。「ブランド構築 = 信頼による差別化」を加速させるパートナーとして、戦略から実装まで伴走します。
また「The Flywheel Checkup」は、数十〜数百名規模の組織に向けた有料のエンタープライズ版もご用意しています。社員が回答することで、階層や職種による認識のギャップを可視化でき、継続的な診断によってブランドの浸透度の変化を追うこともできます(別途ご相談ください)。
▶ ご相談・お問い合わせはこちら:https://iandco.com/ja/contact









