2026年の潮流と展望
ブランド、ビジネス、テクノロジーが交差する未来
こんにちは、I&COです。このニュースレターでは、日本の社会・企業・人のより良い未来への展望を拓くヒントとなるようなコラムや、I&COの最新情報を隔週でお届けしています。
今回のコラムは、ニューヨークに拠点を置くレイ・イナモトが執筆した「2026年の潮流と展望」です。広告業界におけるへ揺り戻しからAIの新しい形態まで、2026年の動きを考察するとともに、NIKEやOpenAIといったグローバルブランドの具体的な動向も予測しています。ぜひご一読ください。
このコラムは、レイ・イナモトの「Patterns & Predictions 2026」をベースに翻訳・編集したものです。

12月を迎え、2026年を覗く時が来た。以下は、2026年のブランドとテクノロジーの交差点における私の考察である:
テレビ広告の逆襲
リーチよりもレリバンス
Eコマースの新時代
AIの新しい形態
これらは、私たちが2026年に目にするであろう潮流だ。それぞれが何を意味し、どのような具体的な変化が待ち受けているのか、詳しく見ていこう。
1. テレビ広告の逆襲
そう、テレビ広告である。具体的にはCTV(コネクテッドTV)だ。
20年前、多くの業界リーダーたちは「テレビ広告は終わった」と声高に叫んだ。彼らは、部分的には正しかった。
若い世代のスクリーンタイムはテレビからスマートフォンへと流れ、テレビ広告費は下がり続け、Netflixは「広告なしでコンテンツを見れること」の対価を払う習慣を人々に根づかせた。ところが今、多くの視聴者が「広告あり」プランを選び、月額7.99ドルを支払っている。
同時に、視聴者はCTVでYouTubeを見るようになった。CTVが成長の主戦場になるにつれ、ブランドは再び15秒・30秒・60秒のスポット広告へと回帰するだろう。資金力と忍耐力のあるブランドは、さらに長尺のコンテンツ制作へ投資を広げていくはずだ。
その兆しはすでに現れている。NetflixとABInBevの協業、F1映画におけるブランドとのパートナーシップ。コンテンツで存在感を示してきたYETIが、グローバルな発信力を高めるべくWieden+Kennedyを起用したこともその一例だ。
振り子は、確実に揺り戻されている。
🔭 予測:
ナイキはワールドカップに合わせて、スケールの大きいフィルム広告を投入してくるだろう。強力で革新的なプロダクトラインを背景に、株価も反発し、現在の63.52ドル(2025年12月時点)から80ドルを超える水準まで戻す可能性が高い。とはいえ、2021年に記録した過去最高値177.51ドルにはまだ大きな開きがあり、上昇の余地は十分残されている。
ナイキが“本気の”、そしておそらく史上最高ともいえる大型フィルムを世に出したのは、2010年の「Write the Future」が最後だ。2026年は、近年のナイキ自身をもう一度乗り越え、ナイキらしさを取り戻すための絶好のタイミングになるだろう。
2. リーチよりもレリバンス
主要な広告主たちは、かつてマーケティングの究極の指標とされたリーチの拡大が、現在ではむしろ鈍い武器になりつつあることに気づき始めている。
ある大手テックプラットフォームの広告担当役員と話した際、彼らはこう語った。
いまやグローバル広告主(P&Gやロレアル、自動車メーカーなどを想像してほしい)は、メディアバイイングにおいてリーチよりもレリバンスを重視するようになっている、と。レリバンスとは、物事と対象のつながりや適合性、妥当性を意味する言葉だ。
ブランドはクリエイターやインフルエンサーへの投資を増やしているように見えるが、この領域は急速に高額化している。何百万人ものフォロワーをもつインフルエンサーが「〇〇とパートナーシップを結びました」と投稿するとき、それは多くの場合、7桁に達する報酬が支払われたことを意味する。そして、かつては効果的だったこうした取引も、もはや以前ほどの力を持たなくなっている。
すべての人の心をつかむことはできない。だからこそ、“全員のための何か”を目指すのではなく、“誰かのための全て”になる ことが重要なのだ。
🔭 予測:
ON Runningは2026年、時価総額を現在の約35億ドル(2025年後半時点)から50億ドル規模へと伸ばすだろう。この成長を支えるのは、プレミアムなブランドポジショニングと、ランナーや都市生活者の間で育まれるニッチで強固なロイヤルティである。
レクサスはブランド史上初めて、グローバル販売台数100万台を突破する見込みだ。その原動力となるのは、同ブランドへの揺るぎない信頼と、いっそうのプレミアム化である。2025年10月のジャパンモビリティショーでは、印象的なコンセプトカーのラインナップを披露した。そしてこのブランドは “紛れもなくプレミアムであること” を貫くことによって、勝利をつかむだろう。適切な購買層から深い信頼を獲得できるのであれば、もはやマスアピールに頼る必要はない。
3. Eコマースの新時代
「会話型コマース」は、2022年後半にChatGPTが登場した頃に一時流行したバズワードだ。そして今、その中心は「エージェンティック・コマース」へと移りつつある。
エージェンティック・コマースとは、自律的なAIエージェントが、利用者の好みや条件を踏まえながら、商品の検索・比較・購入までを代行する仕組みのことだ。Chromeで検索すれば、多くの場合リンクを開くことなく欲しい情報が手に入る。
もはやECサイトを訪れて商品を探したり、購入フローを辿ったりする必要さえなくなる。
ショッピングは“不可視化”されていくのである。
こうした流れのなか、OpenAIとPerplexityは独自のブラウザをリリースし、オンライン検索とショッピングの新たな料金所(ゲートウェイ)になろうとしている。
しかし、彼らの挑戦は容易ではない。ブラウザ市場はChromeとSafariが支配しており、それぞれ52〜54%、29〜32%という圧倒的なシェアを握っている。しかも、クレジットカード情報などがブラウザレベルで保存されているため、GoogleとAppleは事実上のゲートウェイとしての地位をすでに固めているのだ。
勝者:ChromeとSafari
敗者:ChatGPT
🔭 予測:
2026年、Eコマースサイトへのユーザートラフィックは少なくとも5~10%減少する一方で、AIエージェントによって生み出される全体トラフィックは50%以上増加するだろう。
4. AIの新しい形態
先月、サンフランシスコで開催されたローレン・パウエル・ジョブズ主催の「Demo Day 25」で、上機嫌のサム・アルトマンとジョニー・アイブが、OpenAI初となるハードウェアデバイスを発表した。リリースはおそらく今後2年以内。しかし、その詳細はほとんど明かされていない。
ジョブズ / アイブ時代に生まれ、成功したApple製品 ── 初代iMac、iPod、iPhone、MacBook Air、iPad、Apple Watch ── は、いずれも既存のプロダクトをシンプルで、クリーンで、時に遊び心のある形に再構築したものだった。
最初に大衆に受け入れらるAIデバイスのデザインには、いくつかの条件がある。
過去のプロダクトの再解釈であること
Meta/Ray-Banグラスや、“声のためのマウス“と位置付けされている音声操作の Stream Ringがいい例だ。これに対して、HumaneのAI Pin や Rabbit R1 のようなまったく新しいアプローチは、普及までに苦戦する。シンプルで馴染みがあり、時間とともに進化できる形であること
主要な入力インターフェースが音声であること
つまり、古いものが再び新しくなるのだ。

改めて、2026年におけるブランド、ビジネス、テクノロジーの交差点について、私の考察をまとめておきたい。
テレビ広告の逆襲
ナイキはワールドカップに合わせて壮大なフィルム広告を投入。強力な製品ラインナップを背景に株価は上昇するものの、完全な回復にはなお時間がかかる。リーチよりもレリバンス
ON Running の時価総額は50億ドルを突破し、レクサスはグローバル販売台数100万台を達成する。Eコマースの新時代
Eコマースサイトへの直接トラフィックは5〜10%減少。一方、AIエージェントによって生み出されるトラフィックは50%以上増加する。AIの新しい形態
OpenAIは初のAIデバイスを発表。形態は、音声操作に対応したリング、ブレスレット、あるいは小型マイクになるだろう。
(Written by Rei Inamoto 原文はこちら)
「I&CO Foresights」は、今回が年内最後の配信となります。次回は、2026年1月14日の配信を予定しています。




