2025年の潮流と展望
ブランド、ビジネス、文化の交差点における考察
こんにちは、I&COです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。このニュースレターでは、日本の社会・企業・人のより良い未来への展望を開くヒントとなるようなコラムや、I&COの最新情報を隔週でお届けしています。
今回のコラムは、ニューヨークに拠点を置くレイ・イナモトが執筆した「2025年の潮流と展望」です。マーケティング手法の転換からAIがもたらすビジネスの新ルールまで、2025年の動きを考察するとともに、NIKEやMetaといったグローバルブランドの具体的な動向も予測しています。ぜひご一読ください。
このコラムは、レイ・イナモトの「Patterns and Predictions for 2025」をベースに翻訳・編集したものです。

以下は、2025年のブランド、ビジネス、文化の交差点における私の考察である:
マーケティングの終焉
“アンクール”の逆襲
中年層の大転換
ビジネスの「90-10ルール」
次なるインターフェース:音声
1. マーケティングの終焉
2025年、ブランドのマーケティングアプローチは大きく変わらなければならない。
これまでのマーケティングは、注目、認知、感情的なつながりを創出することに重きを置いており、「顧客との信頼関係を築く」という要素はその後に来るものだった。これからは、信頼関係の構築を一層重視したマーケティングへと転換する必要がある。
2024年のアメリカ大統領選挙はこれを浮き彫りにした:共和党のトランプ陣営が選挙キャンペーンに14億ドルを費やしたのに対し、民主党のハリス陣営はそれを超える約18億ドルを費やしたが、結果として民主党は敗北した。

英国首相のソーシャルメディア顧問であるキャス・ホロウィッツがシェアしたこの映像は、ハリスの演説中に、トランプがソーシャルメディアへの投稿内容を口頭で指示している様子を示している。これについてホロウィッツは「世界のリーダーとして珍しいアプローチである」と述べ、Prof G Marketsの共同ホスト、エド・エルソンは「"人"こそがブランドになる」と指摘している。
これは、マーケティングの新しい方向性をも示唆している。
これからのブランドは、作り込まれた完璧な発信ではなく、等身大で頻繁な情報更新と親しみやすい個人的なコミュニケーションによって、顧客との信頼関係を築き、他との違いを明確に打ち出せるようになるのである。
🔭 予測:昨年不振だったNIKEはブランド再建を目指しているが、現在私たちが目にしているのは、ナイキの古い戦略、つまりセレブアスリートを際立たせた広告手法だ。2025年、ナイキはセレブアスリートを含むマーケティングに多額の投資をするが、その効果は限定的なものとなり、ナイキの復活は2026年夏、米国でのワールドカップ開催まで待つことになるだろう。2. “アンクール”の逆襲
言語学習アプリ、フライドチキン、機能性重視のシンプルな衣類に共通することは何だろうか?それは、どれも「トレンディー」や「クール」と言われたことがない、ということだ。
コロナ禍ではラグジュアリーブランドの価値が急上昇した。しかし、パンデミック後、そのパワーは失われた。アンクールなブランドの逆襲だ。
言語学習アプリはどこまでも実用的なツールのひとつに過ぎない。それにもかかわらず、Duolingoはこの分野で圧倒的なフォロワー数(Instagram:350万人、TikTok:1,390万人)を獲得している。
1996年にルイジアナで生まれたファストフードチェーンRaising Cane'sは、ここ数年で勢いを増している。クールとはほど遠いブランドであるが、2024年には約100店舗を新規出店した。 ニューヨーク市では2024年の一年間で100店舗以上の小売店が閉店したが、そんな中でも、コーヒーとチキンの店だけは店舗数を伸ばしている。
🔭 予測:UNIQLOの持株会社であるファーストリテイリングは、2025年末までにH&Mを超え、Zaraの持株会社であるInditexに次いで世界第2位のアパレル小売業者となるだろう。3. 中年層の大転換
2022年から2024年にかけて、私たちはホワイトカラーの不況を目の当たりにした。Business Insider誌主任記者のアキ・イトウは、「The Great Flattening」(組織の階層がフラット化すること)とミドルマネージャーの淘汰の波は、一時的な現象ではなく、今後も続くと主張している。これは2025年において、特にホワイトカラーの中年層が転換を強いられることを意味している。
🔭 予測:LinkedInとSubstackは、経験豊富な中年層がコンテンツ制作に注力する場となり、プラットフォームとして過去最高の年を迎えるだろう。余談だが、私のPodcast番組『レイ・イナモト 世界のクリエイティブ思考』で、40代マーケッターのリスナーからいただいたキャリア転換に関する質問にお答えしているエピソードがあり、お聴きいただけると役に立つかもしれない。4. ビジネスの「90-10ルール」
「90-10ルール」とは、これまでの10%のコストで、90%の品質を実現することを指す。ホワイトカラー産業は特に、今後このような方向に向かっていくだろう。
ある時、リーガルドキュメントの翻訳と公証が必要になった。いつもの翻訳会社に見積りを依頼したところ、「人間による翻訳:320ドル、納期3日間」という条件が提示された。ところが他を探してみると、「90ドル、24時間以内納品」や「60ドル、24時間以内納品」という選択肢が見つかったのだ。「10%のコストで90%の品質」という状況にはまだ達していないが、この業界が間違いなくその方向に向かっていることが分かる例だ。
ソフトウェアやAIが人間に取って代わることはない。しかしながら、より少ないコストとリソースでより多くの仕事をこなすことへの期待は、今後も高まるだろう。
🔭 予測:「ソーシャルメディア向けのプロフェッショナルな動画制作」という領域において、この傾向が最も顕著になる。5. 次なるインターフェース:音声
私たちが最後に経験したインターフェース革命は、2007年のiPhone登場だった。iPhoneの登場以前にもスマートフォンは存在していたが、タッチスクリーンが実用的なインターフェースとして機能するということを、iPhoneは何十億という人々に確信させたのである。
VRとメタバースこそがその次の革新になると誰もが期待していた。しかし、それは実現しなかった。Appleは Vision Proを「空間コンピューティング」と呼び、コンピュータの新しい形として売り出そうとしているが、今のところその成果は見えていない。
Alexa、Google Assistant、Siriもまた、期待されたほどの成果を上げてこなかった。一方で、大規模言語モデル(LLM)が音声認識と自動音声認識(ASR)の精度を向上させたことで、音声による操作は現実的な選択肢となりつつある。

MetaのRay-Banスマートグラスは、同社が初めて成功させる自社開発のハードウェアになるかもしれない。このグラスにはMeta AIを活用した音声機能が組み込まれており、手でジェスチャーする代わりに、話しかけることで操作ができるようになっている。
🔭 予測:2025年、「声で操作する」というスタイルが当たり前になる。Meta の Ray-Banスマートグラスは、クリスマスまでに数百万台の売り上げを達成するだろう(現在の販売台数は約70万台である)。これに対しAppleは、VRではないメガネ型の商品の開発を進め、2026年にはVision Proの低価格版「Apple Vision」を発表する。改めて、以下が2025年のブランド、ビジネス、文化の交差点における私の考察である:
マーケティングの終焉 | ナイキの復活はまだ見えず。
“アンクール”の逆襲 | UNIQLOがH&Mを追い抜く。
中年層の大転換 | LinkedInとSubstackが過去最高の業績を記録。
ビジネスの「90-10ルール」| 動画制作に価格破壊の波。
次なるインターフェース:音声 | 声による操作が大きく進展する。
(Written by Rei Inamoto 原文はこちら)





